おおぞの備忘録

引きこもりたがりの備忘録。

『うちの子が結婚しないので』読書感想

タイトルに惹かれて思わず読んだ本。ほんのりネタバレあり感想。


彼氏の気配のない一人娘を心配した両親が、家族で『親婚活』に励む物語です。
結婚しないのか彼氏いないのかと聞かれるのにうんざりしている人は読んで損はないと思います。結婚の良さが描かれる一方、結婚が幸福に直結するわけではないことにも触れているので、将来を考える材料にはなるのでは。

 

 あらすじ

二十七歳の一人娘・友美の将来が心配になった福田千賀子は、親が子供の代理としてお見合いする『親婚活』への参加を決める。参加者の中では比較的若いから有利……かと思いきや、他の女性参加者は軒並み美人だったり希望する男性(の親)には断られたりで苦戦のスタート。
果たして福田一家は親婚活戦争を勝ち抜き、幸せな結婚をつかむことができるのか?

感想

この世は顔

要所要所で顔を出すこの不条理。友美ちゃんは親の欲目を差し引いてもブスではないのに、なのにこんなに苦労するなんてあんまりだよ……。

「仮に私がとびきりの美人だとしたら、向こうは断ったと思う?」

出典:うちの子が結婚しないので

友美ちゃんの言葉に心をえぐられる同年代(わたし)。わたしがマッチングアプリや婚活に踏み切れない理由もここ。対人関係、とりわけ恋愛においての第一関門は、どうしたって容姿になる。身上書がスタート地点の親婚活ではなおさらだ。美しさと間口の広さは比例する。
可愛いは作れる!ブサイクは隠せる!という格言もありますが、メイクやちょっとのダイエットで誤魔化せないレベルの容姿からすれば喧嘩を売っているとしか思えない言葉……「美人じゃない人も結婚してる、恋人できてる」とは言いますが、容姿で傷ついた経験が多い人間には効かないし追い打ちでしかないと思うんですよね。

千賀子さんはフェミニスト

千賀子はフェミニストであるような描写があったけど、フェミニストというより当たり前のことを言っているだけでは?と思った。

「共働き希望、でも家事は妻が全部やるべき」なんておかしい。無茶苦茶な希望を出す親に向かって反論する千賀子はかっこよかった。ただ、千賀子がそういう視点を獲得できたのは現在も会社で働いているからだと思うな。女性が働くことの苦労を知っているから言えることで、専業主婦だった相手はそんな発想がない。知らないことなんてわからないよね。誰が悪いという問題でもないから難しい。

格差社会

美しさに負けないくらい、きっと立場によっては美しさよりも重視される『格』。
福田一家は庶民です。そのため、親婚活ではいわゆる『上流家庭』との交際はすげなくお断りされてしまいます。これは条件面から入る婚活だから顕著なだけで、自然に出会った場合も同様の悩みは起きるんだろうな。

格差を乗り越えて下剋上するには、惨めさとの戦いに勝つところから始めなきゃいけない。今までの自分は下だったと実感するのはつらい。そのあとも場合によっては、自分を作り上げてきたもの、家族を振り落として上に行くことになる。

そんな結婚では互いに幸せになれない、という心遣いなのか、けっこう失礼な口をきいてくる上流家庭の親が登場します。
でも正直、上とか下とかで判断して失礼な口きくのは傲慢だしいけ好かないどうせみんな税金払ってる身分じゃんで一括りにするのは大雑把すぎるだろうか。 

友美ちゃんが魅力的

SEとして働く千賀子ママも好きなんですけど、友美ちゃんも負けず劣らずいいキャラしてます。いいところがいっぱい。
見切り発車でイタリア出張を志願しちゃう無鉄砲さ。でも出張を成功させるべくがんばる努力家でもある。無鉄砲で努力家って、最強の組み合わせだと思うんですよね。どちらかだけだと口だけだったり言われたことだけしかしなかったりになりそうだけど、この二つが合わさると積極的で実行力のある人間になれる。うらやましい。
何より素直で強か。婚活で傷つくこともたくさんあったのに、何が悪かったのかを分析できる。自分が許容できないと思った相手には失礼にならないようお断りしたり、場合によっては自分の意見をはっきり伝えたり。
見習うべき点が多いと思いました。やっぱり素直さって最強だわ。終盤では仕事が面白くなったと発言しているので、これから先もバリバリ仕事していってほしいなと思います。

親婚活、やってみたい?

やってみたくはならなかった……というか向いてなさそう。親婚活に向いている家庭の条件は、

  • 子供が素直で、自分の弱点を冷静に分析できること
  • 親が比較的柔軟であること
  • 親子仲が良く、コミュニケーションを密に取れること
  • 親子ともに親婚活に乗り気であること

だと思いました。恋愛経験が乏しく、恋愛対象と向き合ってこなかった人間にとって、一番目はかなりハードル高いです。

読んでみたら婚活に踏み切れるかな~という期待もあって読んでみたんですが、この感情も生まれませんでした。

ただ、親婚活をしようと両親が娘を説得するシーンは胸に刺さりました。生涯独身なら、なおさら将来のことをしっかり考えなければならないですね。漫然とお金使っていたけどちょっと考えよう。

総評

ところどころで心に傷を負いつつ、最後まで面白く読めました。男女の理不尽について言及してくれていたので、そうだそうだ!と応援しながら読んでいました。

ただ、わたしは今後の友美ちゃんが少し心配。上司である姐さん(未婚)とはうまくやれるのでしょうか……。